転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


218 そんな事、本当にできたらいいなぁ



 ヒルダ姉ちゃんが水道をあきらめてくれたって事で、僕たちはみんなでお家の中へ。

「ルディーンにいちゃ、スティナねぇ、つべたいおかし、たべたいの」

「いいけど、どっちがいいの?」

「こないだ、たべたやつ!」

 スティナちゃんのリクエストを聞いて、確かまだ残ってたはずだからアイスクリームの入れ物をお母さんに出してもらわなきゃなんて思ってたら、後ろを付いてきたヒルダ姉ちゃんがこんな事を呟いたんだよね。

「あ〜あ、せめて魔道具についてる魔石が取り外せたらいいのに。それができるなら魔力が無くなってきたら外してこの家に持ってくるのに」

 それが出来たら便利だよね。でも無理なんだよなぁ。

 何でかって言うと、さっきお父さんが言った通り魔石って魔物から獲れるでしょ? だから一個一個大きさが違うんだよね。

 だから魔石を使った魔道具だと、それを作るときにはまず最初にちゃんと固定して、その形に合うように回路図を書かないといけないからなんだ。

 じゃあ魔法陣を使った魔道具はどうなのかって言うと、これもやっぱり刻んだ魔法陣をちゃんと固定しないといけないんだよね。

 だって魔石を取り付けた方向がずれたら効果が別の所に働いちゃったり、放出系の魔法陣だったら違う方向に効果が出ちゃうもん。

 だから魔道具から魔石を取り外すと、そのたんびに調整をしなくちゃいけなくなるから無理なんじゃ無いかなぁって僕、思うんだ。

「まだ言ってるのか? そんな事ができたら便利だろうけど、そんな事ができるようなら誰かがもうやってるだろ? 街には魔法使いがある程度の数、いるんだから」

「そうよねぇ。そんな事ができたら、魔力を注ぐ商売を誰か始めてるはずよね。どう考えても魔道リキッドより、便利なんだし」

 魔道リキッドを作るのには魔石と溶解液がいるから絶対お金が掛かるけど、もし魔石を取り外して魔力を注ぐ事ができたら魔力がある人ならただで魔石にそそぐことができるもん。

 もしそんな事ができたとしたら、魔道リキッドより安い値段で魔力を注ぎますって商売を始める人がきっと出てくると思うんだよね。

 でも、そんな人は見た事が無いから、多分できないんじゃ無いかなぁ?


 ……あれ? ほんとにできないのかな?

 一瞬そんな事が頭に浮かんだんだけど、その時誰かが僕の袖をくいくいって引っ張ったんだ。

 だからそっちの方に目を向けると、スティナちゃんが僕の袖の先を摘まみながら首をこてんって倒して僕を見上げてたんだよね。

「ねぇ、ルディーンにいちゃ。つべたいおかしわ?」

「あっ、ごめん。お母さん、スティナちゃんがアイスクリーム食べたいって。まだ残ってたでしょ?」

「アイスクリーム? ええ、残ってるわよ。ちょっと待ってね」

 今はアイスが先だよね。

 って事で僕はスティナちゃんを連れてテーブルまでいくと、そこに座らせてから僕もその隣の椅子に座ったんだ。

 そしたらお母さんが保冷状態のアイスクリームを作る魔道具を持ってきてくれたんだ。

「おっ、これがスティナが言ってた新しいお菓子ね。お母さん、私も頂戴」

 それを見たヒルダ姉ちゃん、水道よりも目の前の新しいお菓子よねって言いながら僕とは反対のスティナちゃんの隣に座って、お母さんにアイスを頂戴だって。

「まだあるから別にいいけど……ヒルダ、このお菓子の事は他で話さないでよ」

「なんで? ただのお菓子でしょ?」

「少し考えれば解るでしょ。このアイスクリームってお菓子も、ルディーンが作った魔道具が無いと作れないのよ」

 そう言うと、お母さんはアイスクリームの入れ物の魔道リキッドを入れるとこが付いてる方をヒルダ姉ちゃんに見せたんだ。

 そしたらお姉ちゃんは納得したみたい。

「確かに、俺なら教えない方がいいわね。ルディーンが作るお菓子はどれも美味しいから、知ったらみんな食べたくなるでしょうからね」

「そうね。でも、魔道リキッドの消費量をこれ以上増やせ無いとなると、作ってあげるわけにもいかないもの」

 アイスクリーム作り機は魔道リキッドで動かせるからお母さんでも使えるんだけど、その魔法リキッドをあんまり使っちゃダメって言われてるんだから近所の人たちに頼まれてもすぐにいいよって言えないんだ。

「スティナちゃんも、この冷たいお菓子の事はないしょね」

「ないしょ? うん、わかった! スティナ、ないしょにする!」

 だからお母さんとヒルダ姉ちゃんはスティナちゃんにも内緒にしてねって頼んだんだけど、そしたらアイスを食べてた木のさじを振り上げて、元気良く約束してくれたんだ。


 だけどさ、ほんとにそれでいいのかなぁ?

 スティナちゃんはないしょにしてくれるって言ったけど、もしかしたらうっかりどこかでしゃべっちゃうかも知れないもん。

 そうなったらスティナちゃんが悪いって事になっちゃうよね。

 だったら僕が魔力でアイスクリームを作ればいいんじゃないかなぁ? って思うんだけど、お父さんはこれ以上僕のお仕事をふやすのもダメって言うんだ。

 僕が魔力で作るのもダメ、魔道リキッドを使った魔道具を使ってお母さんたちが作るのもダメ。

 だったら僕が魔力を注いだ魔道具でお母さんたちに作ってもらう? でも、それだと、いっぱい作ろうと思ったらとっても大きな魔石を使わなくちゃいけなくなっちゃうよね?

 みんなが入るお風呂とかにおっきな魔石を使うならいいけど、アイスクリームを作るのにそんなの使わせてくれないよね。

 う〜ん、そうなると今まで僕が作ってきた魔道具じゃ、村のみんなが食べるアイスクリームを作れないって事になるよなぁ。

 ならどうしたらいいんだろう?

 そこまで考えた僕は、さっきスティナちゃんに袖を引っ張られる寸前まで考えてた事を思い出したんだ。

 魔石に魔力が無くなったら魔道具から外して魔力を注げる人のところに持っていくのって、ほんとにできないのかなぁ?

 それにヒルダ姉ちゃんが言ってたあれ。

 魔石を交換するだけで魔道具が動けばいいのに。

 うん、そうだよね。もしそれができたらすっごく便利になると思うんだ。

 僕はそんな夢みたいな事ができないかなぁって、アイスクリームを食べながら考え始めたんだ。


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